限定承認の事例
限定承認を行うためには相続人全員で行う必要があり、その手続きは複雑です。年間数十万件ある相続放棄の中で、限定承認は数百件程度となり、限定承認を選択される方は少ないのが現状です。また、相続人の中に反対する人がいる場合、限定承認の手続きをおこなうことはできません。以上のように、限定承認の手続きは複雑なうえ、手間も費用もかかることからあまり利用されない方法ですが、ケースによっては非常に有効な方法でもあります。
ではどのような時に限定承認を選択したらいいのか、具体例を挙げながらご説明いたします。
マイナスの財産>プラスの財産ではあるが、相続したい遺産がある
プラスの財産:自宅(被相続人持分3分の1、評価額300万円、相続人が同居)
マイナスの財産:1000万円
こちらの場合、明らかに負債の方が多く、一見相続放棄した方が良いと思われるかもしれませんが、相続放棄をしてしまうと、被相続人名義の住宅を手放すことになり、同居していた相続人も自宅を失うことになります。しかし、限定承認によるプラスの財産は、相続人が先買権を持つため、その評価額を用意できれば優先的に買い戻すことが出来ますので、自宅に住み続けることが可能となります。
マイナスの財産の有無が明らかでない
プラスの財産:900万円
マイナスの財産:負債があるかどうかが不明
被相続人とは日頃から付き合いがなく、借金があるかどうかわからないといった場合などがこれにあたります。 財産調査の後に借金が発覚することも考えられますので、こういった場合には限定承認が有効です。財産調査で分からなかった借金が後に発覚した場合、900万円以上の負債を負うことはなく、弁済して余った財産は受け取ることが可能です。
マイナスの財産とプラスの財産、どちらが多いのか判断が難しい
プラスの財産:800万円
マイナスの財産:借金800万円程度
財産調査をもってしてもプラスの財産、マイナスの財産のどちらが多いのかの判断が難しい場合においては、限定承認をすることでプラスの財産の範囲内で借金の返済をしますので、それ以上のマイナスの財産については弁済する義務はありません。
限定承認についての関連項目
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